その昔、給料が全額小遣いだった古き良き時代。趣味に命を懸けた、その日暮らしのキリギリスがいた。

キリギリスは30歳まで実家で暮らし、高田純次を崇拝し、テキトーの限りを尽くしていた。父を早くに亡くし、妹はキリギリスが26歳の時に嫁に行き、母と二人で好き勝手暮らしていた。

仕事して得た金は全て使った。毎晩飲んで打って、欲しいものは全て買い、暇があれば楽器吹いているか釣りしているか野球しているか水槽弄っているか・・・。

家には週末しか帰らず、職場の近くで飲んだくれ、ベロベロに酔っぱらって会社や健康ランドで寝泊まりする生活を続けていた。

キリギリスには将来の事を考える能力が著しく欠如していたのだが、自分にはそんな自覚すらなく、毎日をひたすら面白おかしく過ごしていた。

キリギリスは魚釣りが好きだった。しかし、魚が一切食えない変わったヤツだった。

魚を釣る行為が楽しく、また、釣りのあとの反省会が楽しかった。

獲物を食べることはしなかった。獲物は他人に振る舞って満足を得ていた。

好きなことには異常な執念を燃やすキリギリスは、釣果を上げるためにあらゆる手段を講じた。

給料を全額趣味に投入していたキリギリスは、とにかく効果があるかないかは考えずに道具に湯水の如く投資した。

集魚効果があると言われていた『ルミコ(ハリスに取り付けるタイプのケミホタル)』を赤、青、黄色、緑と揃え、釣れなければポイポイ違う色に付け替えた。

カワハギ釣りでは効果があるとされている『集寄』も、大小取り混ぜ数十個買った。コリャ効果なかったね。

地磯ウキ釣りのコマセレシピの研究にハマった時期もあった。もちろん我流レシピのクレイジーコマセだ。

チヌパワーとオカラダンゴを混ぜたベースに、オキアミブロック3kg、サナギ粉1kg、砂糖1kg、醤油1リットル、おろしにんにくを加え、さらに薬局でクエン酸とビタミンパウダーを買って添加して、仕上げに魚屋でイワシミンチを買って添加。

絶望的な悪臭。しかし、これが最強レシピなんだと思い込んでいた。

改良を重ね、我流レシピの醤油1リットルがナンプラー1リットルに変わるのに時間は掛からなかった。

絶望的な悪臭に拍車がかかり、より優れたレシピが完成したと思い込んでいた。

コマセ代だけで1回4,000円くらいかかった。

絶大な効果があった。

・・・ベラに┐('~`;)┌

ライバルの周りのエサ取りを一手に引き受けていた(笑)。

高級珍味の『ツナピコ』を食わせに使ったことも。もうこうなるとバカ丸出し。

こうしてキリギリスは、金にモノを言わせ、メチャクチャな暮らしをしていた。

『お~ぃ! 誰かこいつと結婚してやってくれ! こいつの生活をキチンと管理してやらなきゃ、こいつ壊れちまう・・・って、もう壊れてるけど。』

と、社内の女子社員に大声で言い放ったのが、元上司のMさん。

で、名乗りをあげたおバカさんが妻という算段だ。

伴侶を得たキリギリス。あれから12年。すっかり当時のブイブイさは鳴りを潜めてしまった。チャラ男キャラで大ブレイク中の藤森慎吾が羨ましい。

しかし、一度キリギリスとして生まれてしまった者は、死ぬまでアリにはなれないのだ。
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